大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪地方裁判所 昭和28年(行)77号 判決

原告 大和レース有限会社

被告 淀川税務署長

主文

被告が原告に対し昭和二七年七月三一日付でなした原告の昭和二五年九月一日から翌二六年八月三一日までの間の事業年度分所得金額及び法人税額の更正処分中、所得金額金七、九九七、八〇〇円、及びこれと積立金額金一、六九三、二〇〇円に対する法人税額を各超加する部分を取消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実

原告訴訟代理人は主文第一、二項同旨の判決を求め、その請求の原因として、

被告は、原告が昭和二五年九月一日から翌二六年八月三一日までの間の事業年度について所得金額、積立金額及び法人税額の確定申告をしたのに対し、昭和二七年七月三一日右所得金額を金九、三四七、八〇〇円、積立金額を金一、六九三、二〇〇円及び法人税額を金三、三六五、二五一円と更正する旨の処分をなした。原告は同年八月二三日、右処分に係る事項に関する調査が大阪国税局の収税官吏によつてなされた旨の記載がある書面でその通知を受けたので、同国税局長に対し審査の請求をしたが、昭和二八年六月八日これを棄却され、同月二九日右決定の通知を受領した。しかしながら原告は右事業年度において大阪市に対し同市立小学校の校舎増築費として金一五〇万円の寄附をなしているものであるから、法人税法第九条第三項但書、同法施行規則第八条、昭和二五年七月五日大蔵省告示第五一〇号第一号に則り右寄附金は所謂指定寄附金として全額損金に算入されなければならないのにもかかわらず被告は内金一五万円を損金に算入したのみで残額一三五万円については損金不算入の認定をしたものであるから、右更正決定は違法というべく右違法の範囲内において取消さるべきである。よつて本訴請求に及んだと述べ、

一、被告主張事実中、原告が被告主張の如き同族会社である事実は認める。しかしながら本件寄附金は所謂指定寄附金であつて、社会教育事業等公益的事業に対する寄附促進を図るため法人税法第九条第三項但書によつて特に損金算入を認められたものであるから、右条項は同族会社の行為計算の否認を規定した同法第三一条の三第一項に優先して適用さるべきである。従つて指定寄附金については同条に基く否認は一切なし得ないものと解する。

二、かりに右の如き解釈が許されないとしても本件寄附金に関する被告の主張は次のとおりすべて理由がない。

(一)  被告主張事実中、原告が被告主張の如き同族会社である事実の外、原告会社の代表者麻畠粂雄がかねて教育に熱心で被告主張の如き経歴を有し本件寄附がその熱意によつてなされた事実はこれを認めるが、右寄附が専ら原告の区域小学校である特定の菅原小学校の校舎増築資金に供する目的の下になされたものであるとの事実は争う。本件寄附は原告の区域小学校の教室不足を契機としてなされたものではあるが、右は独り右小学校の施設充実という目的のためにのみなされたものでなく、市立小学校全体を対象としてなされたものである。

ところで原告の如き同族会社のなした寄附金については、たとえそれが指定寄附金であつても、大株主又は会社首脳者の出身学校に対する寄附金等その性質が個人的地位に基くもので右大株主ら個人が負担すべきものについては、法人税法第三一条の三第一項によつてその寄附行為自体否認し得るものと解しても、本件寄附は原告会社から義務教育充実という一般的な目的のため広く市全体に対してなされたものであつて前記代表者の個人的特殊関係に基いて特定の利害関係ある対象に対してなされたものではないから、これらのものについて所謂行為否認は許さるべきでない。

(二)  被告主張のうち本件寄附金が原告会社の規模、利益額、寄附の対象等からみて極めて高額で、非同族会社において見られる通常の法人経理では到底なし得ないものであるとの主張は失当である。本件寄附金の本件事業年度における所得金額に対する割合は、右寄附金を損金として計算したときは約二割であり、損金とせず計算したときは約一割一分であるから、右寄附金は原告会社の経理上不当なものとはいえない。従つて本件寄附金については行為否認ばかりでなく計算否認の規定をも適用すべき余地がなく全額損金に算入すべきである。

と述べた。

(証拠省略)

被告指定代理人は、原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。旨の判決を求め、答弁として、

原告請求原因事実中、原告主張の日に被告が原告主張の如き更正処分をなし、これに対し原告が審査請求をしたところ大阪国税局長によつて棄却され、(但しこの日は昭和二八年六月一八日である。)原告主張の日に右決定の通知を受領した事実、原告が本件事業年度において大阪市に対し同市立小学校の校舎建築費として金一五〇万円の所謂指定寄附金をなした事実及び被告がこれに対し内金一五万円について損金に算入したのみで他は損金不算入の認定をした事実はいずれも認める。但し被告の右処分には何ら違法はない。即ち被告が右金一三五万円につき損金不算入の認定をした理由は次のとおりである。

原告は資本金七〇〇万円の有限会社で内九割五分は取締役麻畠粂雄の出資に係り残額もすべて同人の実子の出資に係るもので法人税法第七条の二に該当する同旅会社であるが、右取締役はかねて教育に熱心でかつて大阪市教育委員の経歴を有し且つ本件寄附当時大阪市立菅原小学校のPTA会長をしていた。ところが同校は従来から教室数が不足で二部授業実施中の状態であつたので右取締役らは同市に対し同校教室の増築を懇請してきたが、財政上の理由でその希望は容れられず、一方一般父兄から寄附を求めることも不可能な事情にあつたので、止むなく同取締役は昭和二六年三月頃同市に対し右教室増築のための寄附を申入れ、同年八月二八日原告会社名義で金一五〇万円の寄附をなした。そこで市はこれを以つて建築資材を購入し同校に六教室の増築をし、右取締役の希望に副つたものである。以上の事実から考察するに本件寄附は一応原告会社の名義でなされているものであるが、原告会社の目的たる事業の遂行には何ら必要のないものであるばかりでなく、右取締役個人の教育に対する熱意から同人の居住区域にあり且つPTA会長を勤める前記小学校に対しその個人的事情に基いてなされたものに外ならないから、右は大株主である右取締役個人の寄附を原告会社の支出においてなしたものというべく、課税上むしろ同取締役が原告会社から利益金の割賦を受け然る後個人として市に対しなしたものとして取扱うべき性質のものである、尤も被告は本件寄附が直接原告会社から大阪市に対しなされた指定寄附金であることはこれを強いて争うものではない。しかし右寄附が原告会社から大阪市に対し広く市立小学校々舎建築の資金としてなされたものであるとしても、本件寄附金は原告会社の規模、利益額、寄附の対象等から見て甚だしく高額であつて会社の目的から見て異常且つ非合理的なものというべく、合理的経済人として営利活動を本質とする通常の法人経理においては到底なし得ないものである。従つて右寄附金の行為計算を容認し全額損金として取扱うときは通常の法人即ち非同族会社に比し法人税の負担を不当に減少させる結果となるものであるから法人税法第三一条の三第一項に則り行為又は相当部分計算の否認がなさるべきである。この点会社の業務執行機関が株主総会や監査役らの規則を受けているため会社の存在目的自体を否定するような過大な寄附はなし得ないとの前提から、指定寄附金については全額損金算入を認めている非同族会社との差異が存するのである。そこで被告は原告に対し前記趣旨に基く計算否認の範囲を原告会社の資本総額及び所得金額を基礎にして法人税法施行規則第七条所定の計算方法によつて計算し、端数を切上げた金額一五万円については損金に算入しその余を否認したのである。

以上の理由から被告の本件更正処分の正当であることは明らかであるから結局原告の本請求は理由がない。と述べた。

(証拠省略)

理由

被告は、原告が昭和二五年九月一日から翌二六年八月三一日までの間の事業年度につき所得金額、積立金額及び法人税額の確定申告をしたのに対し昭和二七年七月三一日右所得金額を金九、三四七、八〇〇円、積立金額を金一、六九三、二〇〇円及び法人税額を金三、三六五、二五一円と更正する旨の処分をなしたので、原告は大阪国税局長に対し審査請求をしたところ棄却され、(棄却の日について争いがあるがこの争いは本件の判断に影響はない。)その通知が昭和二八年六月二九月原告に到達した事実、被告は原告が右事業年度において大阪市に対し寄附した同市立小学校々舎増築費金一五〇万円中一三五万円について損金不算入の認定をした事実、原告が資本金七〇〇万円の有限会社で内九割五分は取締役麻畠粂雄の出資に係り残額も全部同人の実子の出資に係るもので法人税法第七条の二に該当する同族会社である事実、原告会社右取締役がかねて教育に熱心でかつて大阪市教育委員の経歴を有し且つ本件寄附当時同市立菅原小学校のPTA会長をなしていた事実及び右取締役において同校教室不足から市に対する寄附を思い立ち昭和二六年八月二八日原告会社名義を以て大阪市に対し金一五〇万円の寄附をなした事実はいずれも当事者間に争いない。

一、原告は本件の如き法人税法第九条第三項但書所定の指定寄附金についてはその性質上同法第三一条の三第一項所定の同族会社の行為計算の否認は全く排除される旨主張するので、まずこの点について判断する。

法人税法第九条第三項本文によれば法人のなす普通の寄附金については命令(即ち同法施行規則第七条)の定めるところにより限度を定めて損金算入を決めておりその余は損金として認めないが、同じく法人のなす寄附金であつても同法施行規則第八条により大蔵大臣の指定するものについては同法第九条第三項本文によつてすべてこれを損金に算入することとしている。しかして右趣旨は普通寄附金については当該法人の事業遂行上必要と認められる範囲のものに限つて損金とし非課税とするのであるが、(尤も右範囲決定については課税の公平を図り租税法律主義を貫く立場から行政庁の裁量に委ねず前記規則によつて画一的取扱を定めている。)指定寄附金についてはこれが国家公共団体、社会事業団体或は神社仏閣等に対し、社会、教育、学術、文化、厚生、宗教等国民の福祉増強に供する目的を以つてなされるもので非営利的であり且つ国家としても奨励すべき性質のものであるところから特に全額損金に算入し非課税としたものと解することができる。従つて指定寄附金の損金算入の趣旨は普通寄附金の場合とは全く別個の考慮に基くものであつて、租税理論上本来損金たり得ないものをも特に損金と見做して取扱つているものであるから指定寄附金についてはその制度自体これに基く法人税収入の減少は当然これを予想し容認しているものと解さねばならない。そこで少くとも法人のなす指定寄附金についてはそれがいかに多額で且つ当該法人にとつて過分なものであろうと、これを損金に算入すべきことは右法条に照らし明らかなところであるが、右は飽くまで当該法人が常にその設立目的に従つて合理的経済活動を行い得る制度的保障のある場合に限らるべきであつて、法人税法第七条の二所定の同族会社のように株主又は社員がその法人の多額出資者でありその法人に対する支配力が大きいものについては自ら事情が異るものといわねばならない。即ち同族会社においてはその首脳者が個人的意思によつて会社の行為又は計算を自由に左右できるところから、会社は実質的には首脳者個人の負担すべき出費を自己の出費として首脳者の租税負担の軽減を図ることができるばかりでなく、純経済人として合理的経済活動にのみ終始すべき法人たるの性質に反して著しく不当な出費も可能となるので、同族会社のなした指定寄附金であつても実質的にはその会社の首脳者の個人的地位に基くもので当該個人の負担すべきものと認められるものについてはこれを会社の損金とすべきではなく、また法人としてその経理上到底なし得ないような多額な寄附は形式的には会社の支出であつても法人たるの性質に反してなされたもので会社の行為ということができず結局法人税を不当に免れるものに外ならないから損金とすることはできない。要するに法人の指定寄附金についても実質的意味において「法人のなす寄附金」としての制約は自ら存するものといわなければならない。従つて前述のように常に法人としての制約の下で活動し得る制度的保障のある非同族会社においては格別、同族会社に関する限り指定寄附金についてもその行為又は計算の否認はなし得るものと解すべきである。よつてこの点に関する原告の主張は理由がない。

二、本件において、被告は本件寄附金が原告会社より直接大阪市に対する指定寄附金であることを明らかに認めている(昭和三三年二月一八日の口頭弁論)点に被告が本件寄附金の損金算入を全額につき否認せず金一五万円を超える部分についてのみ否認している点を併せて考えるならば、被告は本件寄附金をその形式においては原告会社よりの寄附であるがその実質においては原告会社個人の寄附であるとなして所謂行為否認をしたものではなく、同族会社なるが故にかかる多額の寄附が行われたものとして所謂計算否認をしたものと認めるのが相当であるが、本訴訟においては被告は行為否認をしたものの如き主張をもしているので念のため本件寄附金につき行為否認をなし得るか否かにつき判断する。

原告会社代表者麻畠粂雄が本件寄附当時大阪市立菅原小学校のPTA会長をしていたという当事者間に争いのない事実、証人竹下重義の証言、右証言により成立を認めることのできる乙第五号証、成立に争いのない乙第三号証の一、二、原告会社代表者本人訊問の結果等を綜合すれば、本件寄附金は大阪市に寄附せられたものの、その収納原符には菅原小学校校舎建築寄附金と記載せられ且つ金一五〇万円がその頃菅原小学校建築資金に支出せられていることが明らかであり結果において本件寄附金がそつくりそのまま原告代表者がPTA会長をしている同小学校の建築資金に支出せられたものと認めざるを得ないのであるから本件寄附金は形式は原告会社よりなしたものの実質は代表者個人よりなしたものとして行為否認をなし得る場合に該当するが如く考えられないでもないが、飜つて仔細に案ずるに、成立に争いのない甲第一号証によれば本件寄附申出書には本件寄附金の使途につき大阪市立小学校教室増築資金とあるのみで特に菅原小学校を指定するが如きことは認められないのみならず、証人清水五寿雄、同竹下重義の各証言、原告会社代表者本人訊問の結果及び成立に争いのない甲第一号証によると右代表者麻畠粂雄はかつて大阪市教育委員を勤めたこともあつて教育に対する関心が深く、従来原告会社の代表者として或いは個人として教育事業のためにかなりの寄附をしてきた者であるが、自己がPTAの会長を勤める市立菅原小学校が創立日浅く設備も不充分である上同校校区の児童数増加のため教室数に不足し二部授業実施中の窮状を見て寄附を思い立ち、原告会社の経営を極力節約することにより資金を捻出し昭和二六年八月二八日同人が取締役をしている原告会社名義を以つ同市に対し同市立小学校増築の資金として金一五〇万円の寄附をなした事実を認めることができ、前記乙第三号証の一の収納原符に菅原小学校校舎建築資金の記載の存するのは、証人竹下重義の証言及び原告会社代表者本人訊問の結果によれば、大阪市において本件寄附を受理するに際し多分に右代表者の意思を推測して記載されたものに過ぎず同人において前記記載部分に異議があり同人に手交された。同号証と一連をなす受領証については右部分が抹消されているものと認めることができるのであり、又乙第五号証についても大阪市吏員において右代表者の意思を推測して便宜本件寄附金をそのまま菅原小学校校舎建築に支出したに止まり右支出が同人の意図に出たものなることを確認し難い。してみると前記認定の事実からして本件寄附が右代表者個人と直接に繋りのあるものであつて性質上原告会社の到底なすべからざるものとは認められず会社においても充分なし得るものと解せられるから、一応原告会社名義を以てなされた本件寄附は原告会社のなしたものと認めるのが相当であつて、本件寄附が実質的には代表者個人の寄附である旨の被告主張はその全立証を以つてしてもこれを認めることはできない。ただ被告は本件寄附が原告会社の資本額、所得額に比し多額であることから、取締役個人の寄附として取扱うべきであると考えているようであるが、個人の寄附金たるの性質を有するか否かという問題と会社の支出して寄附金としては多額に過ぎるか否かという問題とは自ら別個の問題であつてこれを混同すべきではない。(前者については法人税法三一条の三第一項所定の行為の否認に該当し、後者については同項所定の計算否認に該当する。)よつて本件寄附金を以つて原告会社取締役個人の寄附であるから行為否認し全額損金不算入とすべきであるとする被告の主張は理由がない。

三、更に被告は本件寄附金が原告会社によつてなされたものであるにしても右は原告会社にとつて不当に高額な支出であるから相当部分計算の否認がなさるべきである旨主張するのでこの点について判断する。

被告は本件寄附は原告会社の規模、所得金額、寄附の対象等から見て他の非同族会社との対比において著しく高額で通常の法人経理においては到底なし得ないものでこれを全額損金として取扱うときは他の非同族会社に比し法人税の負担を不当に減少させるものであると主張し、右寄附金の中一部につき計算の否認をなしたのであるが、右計算否認の根拠として法人税法施行規則第七条所定の計算方法を採用しているので、まずこの計算否認の方法が本件のような指定寄附金の計算否認の方法として適法であるか否かについて考えてみるに、普通寄附金についての法人税法第九条第三項本文、同法施行規則第七条は同寄附金中損金算入部分と益金算入部分とを画一的に法定している。この意味は同条所定の損金算入部分を本来の損金性を有する額即ち益金獲得につき必要な費用とし、然らざるものとを区分するにある。従つてこの場合においては課税庁は同条に拘束せられ損金と益金の計算を一律になすべきことを義務付けられている。然るに指定寄附金の場合は大いに趣を異にする。指定寄附金もまた本来の性質からいえば損金性を有する部分と然らざる部分とに区別できるであろう。しかし法は別個の政策的見地から指定寄附金はその全額を損金と擬制した。従て指定寄附金についてはこれを本来の損金と然らざるものとに区別すべき余地はない。非同族会社の指定寄附金であれば当然全額が損金に算入される。これは非同族会社においては自働的に会社の経理が合理的に行われ全額損金算入を認めても差支えないものとされるからである。然るに同族会社においてはややもすれば会社経理が合理性を欠き非同族会社においては到底考えられないような指定寄附金がなされるおそれがある。之れ法が別に同族否認の規定を設け同族会社なるが故に、非同族会社ならばなされなかつたであろうところの巨額の寄附がなされた場合には、法人税の逋脱がなされたものとして行為又は計算の否認をなすことを許した所以である。しかしてかかる逋脱の事実の有無を判断するについては課税庁は固より恣意は許されない。この裁量は所謂法規裁量であること勿論であつて当該同族会社の資本額、当期所得額等は勿論のこと、所謂計算否認をなしその中幾何を損金とし幾何を益金となすかについては、かかる巨額の寄附金がなされたのが会社経営上の合理的経理を逸脱し同族会社なるが故に可能であつたものであり、従て法人税逋脱の事実あることを明らかにせねばならぬのである。それが為には凡そ同一規模の非同族会社ならば通常指定寄附金として最大限何程の額をなすであろうか、即ち会社経営の合理的活動として認められる最高額を想定しその額を超える当該同族会社の指定寄附金額のみを問題とせねばならぬ。本件において資本金七〇〇万円、当期所得金額九、三四七、八〇〇円(本件一五〇万円を含む)の会社が一五〇万円の寄附をなすことは極めて高額にすぎ所謂計算否認をなし得ることは当然であるとするも、その規定の趣旨が寄附金中本来の損金性を有する部分と然らざる部分とを区別することのためのものである施行規則第七条を借り来つて、その性質を全然異にし非同族会社と同族会社との対比において事を決せねばならぬ場合に処するのは、何等成法上の根拠を見出すことができず違法というの外はない。

よつて被告の原告に対する本件更正処分は法人税法第三一条の三第一項の適用を誤つた違法があるものというべく右違法部分の取消を求める原告の本訴請求は正当であるからこれを認容すべきものとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 宅間達彦 常安政夫 高田政彦)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例